吉原彼岸花〜久遠の契り〜 真相ルート 感想


さぁ、ついに真相まで辿り着きました。この作品の真相ってなんなん?分ける程なんだろうかと思っていた私がアホでした。嗚咽漏れる程泣いた。



※ここから先はネタバレ注意です!!!!!















◎真相ルート


真相ルートという名の時雨さんルートでしたね。


時雨さんの左目が失われたのは先代から凛ちゃんを守ろうとした際に振り上げた煙管を目に受けたことが原因だというのは前に判明していましたか、そのシーンが掘り下げられます。


先代と時雨さんはどうやら仲が悪いご様子。

時雨さんがいない間に内証で凛ちゃんにセクハラをする先代……うあああキモい!!!先代キモい!!!『腐った卵のような口臭』ってもう最悪すぎる…。

時雨さんが助けてくれなかったらと思うと……。



共通ルートであった、夜になると聞こえる呻き声。その声が聞こえるのは内証から。襖を開けても声の主はおろか、時雨さんの姿もありません。それでも聞こえる声。なんと内証には隠し扉があり地下へと続く階段が。恐る恐る降りて行く凛ちゃん。


そこで見たものは、いなくなっていた糸里…と折檻をおこなっている時雨の姿でした。


笑いながら糸里に鞭を打つ時雨さん。やばいやばい。糸里も泡吹いてるしこのままじゃ……。返事をしなくなった糸里の首を絞めようとする時雨さんだけれど、それまでの様子とは一転「くるな…!くるな…!」と目を押さえながら怯えた様子で取り乱している。

恐怖を覚えた凛ちゃんはその場から逃げ出してしまいます。


そんな姿を見てしまったのだから、まともに時雨さんのことを見ることが出来ない凛ちゃん。

糸里は姿が見えないことから足抜けだろうと追われるのですが、地下での出来事を目の当たりにしてしまった凛ちゃんは時雨さんが糸里を死なせてしまったのでは……と嫌な考えが頭をよぎるも、十年間自分を守ってきてくれた時雨さんを信じないでどうすると、その考えを封じ込めます。


そして惣さん登場。三度目の登楼で身請けを申し込まれますが断る凛ちゃんに、時雨が楼主になってから遊女の失踪が相次いでる、時雨が何かやっている、そんな場所に凛をおいておけないと言う惣さん。しかし凛ちゃんは時雨さんを咄嗟に庇う。あんな場面を見ているのに…。



ある日内証へ呼ばれた凛ちゃん。時雨さんにお茶の中に薬を盛られ、地下の折檻部屋へ入れられてしまいます。


「そう怖がらなくても、痛いことも怖いこともしないよ」

「お前は、糸里や他の遊女とは違う。私にとってただ一人の、特別な存在だからね」

「私がいないと生きてはいけない。そういう体に作り変えるだけのことだよ--」


折檻で鞭で叩かれたりとかも嫌だけど、こんなことされるのも死んでも嫌だ……時雨さん病みすぎてる……怖い……。というか地下で糸里に折檻してるの見てたこと普通にバレてるし!こわっ!!


恋人や夫婦としてではなくても時雨の支えになりたいと思っていたのに、淫らな真似をされたことがショックで涙を流す凛ちゃん。そりゃそうだ、裏切りだよこんなの。

その涙を拒絶だと受け取った時雨さんはお前がその気なら考えがある、と


「凛--お前は、柚のことをよく可愛がっているね」

「私もまだ、子供に笞打ったことはないんだよ」


柚ちゃんを人質にとります。最低最悪外道です。絶許。Switch本体をぶん投げるかと思うくらい怒りが沸きました。凛ちゃんが観念し、自分の手に堕ちてくるのをいつまでも待つ時雨さんはイカれてます。何回でも言うけど怖い。


すると時雨さんが突如うなされて「どこにも行くな……」と凛ちゃんに縋り付きます。

この直後に現れた選択肢が『……放っておけない』or『自業自得』だったのですが、後者を選びたくて仕方なかったですwまぁストーリー的に前者なのは明らかなので断腸の思いで放っておけないにしましたけどw


あ、時雨さんのことを気にかけて「何かあったら知らせてこいよ」と凛ちゃんに伝える彰人さんが素敵でした。友情に厚いんですね!好きです!(*´ω`*)



そしてびっくりしたことと言えば、お菊さんが内証の地下室のことを知っていたこと。お菊さんはずっと抱えてきた時雨さんの秘密を凛ちゃんに話してくれます。


まず先代の死は、酒を飲み過ごし酔っ払ってお歯黒どぶに落ちたとされていたのですがやっぱり時雨さんが手にかけたのですね。そこは予想通りだった。


時雨さんの母は京の公家筋の姫だったのだが実家が没落。身売り寸前だったところを、遊女を見る目だけはある先代が拾います。

二人は祝言をあげるものの、二人の関係は冷えきっていた。さらに姫は子を産むが、誰の子かは不明。

自分の子ではないと分かった先代は時雨さんを虐待します。母も息子を庇おうとせず、さらには乳をあげるのも渋っていたといいます。そしてふらっと出ていきそれっきり現れることはありませんでした。


先代である父親を殺したのは凛ちゃんを守るためだったのでしょう。左目を失ったあの日、凛ちゃんを傷つけようとした先代をどうしても許せなかった。

折檻をしている際にいたぶって満足そうなのは途中まででそれから急に悲鳴をあげ苦しみだすのは、先代と同じことをしている自分が一気におぞましくなるからなのではとお菊さんは言います。



母親からも父親からも愛情を受けてこなかったのが時雨さんが狂ってしまっている要因だったんですね。なんか……なんとも言えない。可哀想だと感じてしまうのは自分が愛情を受けて育ってここまできたからなのだろうと思うと。



後日、柚ちゃんの姿が見えないことに不安を覚えた凛ちゃん。柚なら内証に向かったという辰吉。慌てて内証へ行くと柚ちゃんは無事でした。よかった。

すると柚ちゃんが時雨さんの日記帳を見つけたと、その中に挟まっていた押し花を見せてきます。その花は彼岸花



凛ちゃんが幼い頃、故郷の駿河の湖で出会ったのは右のこめかみに何かで抉られたような傷があり、顔の半分が血で濡れていた男性。驚いた凛ちゃんは慌てて近寄り、手当をしようと手ぬぐいで血を拭きます。痛そうな傷に思わず泣いてしまう凛ちゃん。


お見舞いに、と湖の畔に咲く花を一輪その男性に渡します。けれど彼岸花はお見舞いのお花としては縁起が宜しくない。死人花、地獄花、幽霊花という異名があるから。と言う。

そんな花は渡せない!捨てちゃって!と慌てて取り返そうとする凛ちゃんでしたが、


この花には葉がない。葉が生えるのは、この赤い花が散ってから。

『葉見ず、花見ず』

葉は会えない花を想っているし、花も会えない葉を想っている。いつでもお互いに焦がれて求め合っている。

だから『想思花』という名前もある。


自分はこの花が好きだと、そう言って微笑む男性。


隠れんぼの途中だったのでそろそろ行こうとする凛ちゃん。初対面だと言うのに、どうにも別れがたい気分になっていました。


「また会える?」


自分の名は凛で清州屋という呉服屋が自分の家だと伝えます。


「近くを通ったら、また会いに来てくれる?怪我が治ってるかも気になるし……」

「だったら、そのうち着物を買いに行くよ」


男性が着る着物を選んであげるという凛ちゃんでしたが、彼は「君が大人になったら着たいと思うような着物を選んでおくれ」と言う。

よく意味が分からなかったけれど、また会えるのだと思うと純粋に嬉しくなった。


「待ってるからね。ほんとに来てね」

「ああ。約束だ」


「忘れてた!お兄さんの名前はなんていうの?」


「---時雨」



そう、この青年は時雨さんだったのです。彼岸花の咲き乱れる、夏の終わりの出会い。

時雨さんにとって凛ちゃんは初めて自分のことを心配してくれて、怪我の手当をしてくれて、自分の為に泣いてくれ、贈り物をしてくれた人だったのですね。初めて嫌悪でも憎悪でもない、優しさを向けてくれた人だった。

時雨さんが凛ちゃんだけは特別だというのはこの出会いがあったから?胸が締め付けられました。

凛ちゃんの両親を自殺に追い込んだ原因は時雨さんにあることも、これまでで分かっているのに。この出会いを見てしまうと、憎いという気持ちが薄れてしまいます…。



時雨さんは段々と右目も見えなくなっていく。怪我をした時雨さんを看病する凛ちゃん。

右腕にヒビが入っている為激しい動きは出来ないというのに抱こうとしてきます。時雨さんの境遇を知り、押し花を見てしまったからか、最中に思わず時雨さんの左目を舐める凛ちゃん。それに対し「お前は私に抱かれるだけの人形だ」と突き放します。


数日後も呼ばれたわけではないのに内証へ行く。すると自分が初めての揚げ代で贈った眼鏡を大切そうに眺める時雨さんの姿。もうほとんど右目は見えていないという。そこでも抱かれる凛ちゃんでしたが、どんどん時雨さんへの気持ちが膨らんでいく。男女は別個の肉体しか持ちえず、ひとつになどなれはしない。


(どうせ、離れてしまうのなら)

(私は--時雨様を産みたい)

(時雨様をこの世に産み落として、幸せな子供時代をやり直させてあげたい……)



時雨さんの境遇を知って同情の気持ちもあると思うけれど、酷いことをされても時雨さんのことを想える凛ちゃんは聖母ですね…。このモノローグは号泣しました。これからの時雨さんを幸せにしたい、よりも愛情を与えられなかった子供時代をやり直させてあげたいって…(´;ω;`)



すると突然役人達が桜華屋に押しかけてくる。遊女殺し、父親殺し、そして火付けの嫌疑がかかっているとのこと。遊女と父親殺しは分かるが火付けとは?と混乱する凛ちゃんでしたが。落ち着いている時雨さんを内証の地下室へ連れて行く。身を潜める二人。

役人は去ったものの、現れたのは惣さん。

役人に時雨さんのことを密告したのは惣さんでした。


そして、清州屋に火をつけたのが時雨さんだと暴く惣さん。

「清州屋を借金まみれにさせ、そうすれば両親が凛を吉原に売ると思い込んだ。あの優しい二人が、そんなことをするわけもないのに」


「ああ……あれは私の誤算だったよ」

「まさか、親というものが、そこまで我が子を大切にするのだとは知らなくてね」


悲しい。このセリフが本当に悲しい。

自分の両親であれば我が子を身売りに出すことなど躊躇わないだろうから、凛ちゃんの両親も当然そうなのだろうと思っていたのに、我が子を守ろうとしたのは時雨さんにとって考えてもみなかったことだったのですね。そんな考えが浮かばなかったくらい、愛情が与えられないことが当然のことだった…。


お職になれる子を探していた。桜華屋の将来の為に凛ちゃんを吉原へ連れてきた。時雨さんのその言葉を信じ、両親を死へ追いやったのを許せないと言う凛ちゃん。手にしている銃の引き金を引こうとする惣さんに対し、


「私は役人に裁かれる気も、誰かに殺されるつもりもないよ」

「--引き際は、自分で決める」

「--さよならだ、凛」


行灯油を撒き、そこに火をつける時雨さん。

火はあっという間に回り、どんどんと燃えていく。時雨さんを連れて行こうとする凛ちゃんですが、それは許さないと惣さんは凛ちゃんを気絶させ店の外まで連れ出します。



*バッドエンド「見ている」

時雨さんはあのまま炎に焼け尽くされ死んでしまう。惣さんの妻になった凛ちゃん。

ある日彰人さんが訪れ、時雨から凛宛に預かっていたものがあると渡してくれる。

それは小判の山。しかもここにあるのは一部で、全部合わせると三千両という大金。

そして彰人さんは時雨さんの話を聞かせてくれる。


生きることなんかどうでもいいと無気力だった時雨がある時から急に家業に向き合うようになった。その後に凛ちゃんが来たと。

「あの頃からだな。時雨がよく笑うようになったのは」

「嘘臭くないあいつの笑顔を見たのは……お前といるときだけだった」

「嫁にでもする気で育ててんのか、ってからかったこともあるんだぜ」

「そうしたら『それは釣り合わないものだよ』って、あいつは真面目に言ったんだ」


釣り合わない、というのは立場や歳のこと……ではなく、本当は凛ちゃんに負い目があったのではないでしょうか。自分では幸せに出来ない。その資格がない、と。

時雨の真意は自分で考えなと言い去っていく彰人さん。


彰人さんの話を聞き、凛ちゃんが出て行くのではと不安になる惣さん。力なく「出て行かないわ…」と答える凛ちゃんに、死人に心を持っていかれるなんてと嫉妬心を見せる。

これまで大切に扱い、一度もしなかった惣さん、凛ちゃんを抱こうとします。

しかしそんな惣さんの心も知らず、「酷くして。時雨様には酷く抱かれていたから」と言う凛ちゃん。


大切に大切に想ってきた凛ちゃんの心は両親の敵で今はもういない時雨に囚われていることを目の当たりにした惣さんは傷つき、そして冷たい目を向ける。

惣さんに抱かれている時、時雨さんの視線を感じ幻聴が聞こえ、そして亡霊が見える。一番近くに時雨さんを感じるのでした。


もうこれも惣さんが可哀想だよー!!!。゚(ノдヽ)゚。



*ベストエンド「彼岸花

燃え盛る桜華屋。惣さんによって外へ連れ出された凛ちゃんでしたが、どうしても時雨さんを置いていくことが出来ず、水を被り時雨さんの元へ戻ります。

もう全焼し崩れ落ちるのも時間の問題な桜華屋。内証には何かをを握り締めて部屋の隅で蹲る時雨さんの姿が。

地下にいたはずの時雨さん。自ら店に火をつけ一人きりの死を覚悟して。それでもどうしても最後に手にしていたかったもの。それは、凛ちゃんが時雨さんへ贈った眼鏡でした。


凛ちゃんを突き放したはずなのに。両親を奪った人なのに。

散々間違ったことをして、それでも最後の最後には、凛を守ろうとしてしまう人。

どんな女をも魅了する優美な美貌。

しなやかさとたくましさを兼ね備えた立派な長躯。

欲しくても手に入らない人がたくさんいるものを時雨さんは持っているんです。


だけど凛ちゃんは知っている。

時雨さんの内側には決して埋まらない空洞があり、どうしようもなく壊れた綻びがあることを。

その全てを知り尽くした上で、それでも。時雨さんのことを抱きしめられるのは自分だけだと。


時雨さんの目はもう見えていません。

凛ちゃんが名前を呼んでも幻聴が聞こえると言います。抱き起こし、幻聴ではなく本物の凛だと伝える。逃げろと言われても嫌だと。

「お前を巻き込もうなんて思っていない」

「どうかご一緒させてください」


「時雨様……あなたのしたことは、きっと誰からも許されません」

「だけどそれなら、私も同じように許されないんです」

「間接的にでも、自分の家族を殺めたあなたを……どうしても憎みきれない」

「両親にとっては、私も卑劣な裏切り者です。--あなたと同じ、罪人です」

「だから、一緒に連れて行って」

「時雨様を一人で逝かせたりしません」


桜華屋はどんどん崩壊していく。二人がいる内証ももう。


彼岸花………」

「え?」

「昔、お前が私に彼岸花をくれたことがあったね」

「………はい」

「--あれは、綺麗だった」

「お前に出会って初めて……この世にも綺麗なものがあることを知ったよ」

「無表情で血を流す私を気味悪がらなかったのも、傷が痛むだろうと泣いてくれたのも、お前が初めてだった」

「小さなお前の手は、温かかった……本当に温かかったんだ」


「あのときから、ずっとお前が欲しかった」

「何も、お前の恋人や夫になりたかったわけじゃない」

「ただ、見ていたかったんだ」

「お前はいつでも真っ直ぐで……」

「何があっても穢れないお前の魂を目にしていれば、自分も生きていける気がした」

「お前が私を優しいと言ってくれれば、優しくなれた」

「尊敬すると言ってくれたから、そうあろうと努力した」

「凛が私を『人』にしてくれたんだよ」


口付けする凛ちゃん。二人は何度も繰り返す。

目はもう見えない。


「もう一度だけでも、お前の顔を見たかったよ。だけど、因果応報だろうね」


時雨さんと共に残ることを決めた凛ちゃん。

炎が揺れる。その光景は、まるで一面に咲いた彼岸花


「時雨様、ほら……そこらじゅうに彼岸花が咲いているみたいです」

「わかりますか?見えますか?」

「ああ、わかる……見えるよ」


時雨さんはきっと、過去のあの日の光景を見ている。


「私たち、あの日に帰るんです」

「あそこからもう一度出会い直して、今度は……」

「そうだね。今度はきっと、お前と--」


二人は炎の中、初めて出会った彼岸花が咲くあの夏の終わりに帰っていくのでした。



✩。* *。✩


朔夜ルートをやって、私の中の時雨さんの信用度はマイナスで。惣さんルートでも酷くて怖くて。

正直好きになれずに終わるかと思っていました。真相ルートの途中までそう思ってた。


なのにどうしてこんな気持ちになっているのか。


時雨さんはやっていることは最低、どころか畜生なんです。なんの罪もない遊女に死に至らしめるまで暴力を振るい、凛ちゃんを手に入れる為に直接ではないとはいえ両親を死へ追い詰めた。他にやり方があったろうと正直思います。


でも、そう思えるのって裕福とは言えなくても両親がいて、愛情を受けて不自由なく生きてこれたからなのかなと思うんです。

時雨さんには心を満たす愛情が誰からも与えられなかった。

擁護なんてもちろん出来ません。だけど責めることも出来なくて。同情からかもしれないけれど。


悲しくて、寂しくて、苦しくて。なんだかフィクションだとは思えなかったんです、時雨さんの境遇が。

弱っている時に優しくされると惹かれるように、心が空っぽで何も感じなかった時雨さんに初めて人の温かさを教えた凛ちゃんを手に入れたいと思うのは道理にかなっていると思う。


どうかまた、あの日から二人がやり直せますように。



時雨さん。

好きかと言わると、好きではない。でも嫌いかと言われると嫌いになんてなれない人でした。

この先彼岸花を見る度に、きっと思い出してしまうくらいには。